橋本一郎(はしもと・いちろう)さん


昭和
11年12月 1日
34年 3月 同志社大学 卒業

36年 4月 朝日ソノプレス 入社
43年 3月 退社
〃年    少年画報社 入社
52年    退社

以後は著述業に専念

公式ツイッター:https://twitter.com/hashimotoichi23


朝日ソノプレス時代に手掛けた主なソノシート化作品:
鉄腕アトム、鉄人28号、エイトマン、狼少年ケン、
ジャングル大帝、おそ松くん、オバケのQ太郎、
リボンの騎士、悟空の大冒険、ひょっこりひょうたん島、
ウルトラQ、ウルトラマン、マグマ大使、悪魔くん 等々


 
  
オバケのQ太郎』の音盤も独占されたと橋本さんの著書にありましたが、これは藤子不二雄先生の絵の使用権という話ではないですか

 いや、そうではなくて、オバQの時から小学館がマーチャンダイジングの窓口を設けたんです。で、一切のマーチャンダイジングは、そこで扱うという事になったんです。
 
 
音盤は日音じゃないんですか

 音盤は日音だけど、小学館が一切の窓口になってるんです。全て窓口は小学館で。
 それで、小学館と独占契約結んだんです。 音盤に関して。で、途中からやっぱりうるさくなりまして、 業界が。レコード8社とシート10社がワイワイ窓口に押しかけて、それで開放したという。

 立場上すごく苛められたらしいんですよ、小学館の窓口が。なんでソノラマに独占させたんだと。出せば黙ってても2万や3万(枚)売れますからね。それで話し合って、一年くらいで独占権解除したんです。
  オバQまでは権利がバラバラで、 作詞、作曲、キャラクター、テレビ局、全部一つずつ抑えなきゃなんなかったんです。

 
オバQ音頭の制作発表をホテルオークラだかでやった時には行かれたんですか

 いや、行きません。あれは余所の会社(日本コロムビア)。作ったのはコッチなんだけど(苦笑)。

 
橋本さんがお作りになったんだけど原盤権はソノラマに無かったんですか

 原盤権は小学館を媒介にして、 日音が持っていたんです。TBSの音楽関係は日音が管理するんです。ただ、オバQは小学館が全体的な権限を持ってました。

 
立場としては日音よりも小学館が上なんですか

 はい。商品化権を一切持ってるから。

 
日音と言えばアニソンではスーパージェッターが一番最初ですね

 そうです。


あれは橋本さん担当ではなくて村山実さんですか

 はい。あれは独占ではないです。

 
局の方で楽曲を管理する(独占不可能)となった時はどんな感じでしたか

  いずれそういう時期は来るんじゃないかなと。そういう事も有って片面がドラマという。
 ドラマっていうのはお金がかかるんです。 音楽の倍くらい。

 
当時のレコードはシートのように枚数を捌けないという事ですね

 ソノシートの場合は取り次ぎが書籍扱いで。 書店は当時3万軒あって、レコード店は3千軒っていうんだけど、3千軒も無かったんじゃないでしょうか。
 で、レコード会社は独自の流通ルートで非近代的で、書籍は違うんで。書店の場合はドカンと印刷したら配布をして、一定期間お金が入ってくると。机が有れば回転していく。
 レコードの場合には、そういう取り次ぎも有るけど、昔の問屋さんみたいに行って頼んで置いてもらって、日数通りに金が貰えるかどうかは決まってないところが有って。
 流通過程の問題も有ったんです。
 
 
鉄腕アトム』は放送開始から半年以上経ってから橋本さんが初めて音盤化されて、その時に独占契約されたのですが、後ほどクラウンからも出ましたよね。

 音盤に関する独占契約を虫プロと結んでいたわけです。それで暫くは他社は出す気が無かったんだけど。
 ソノラマの課長にフランス映画の配給から来た、録音も出来なければ冊子の編集も出来ない人がいまして。

 艶歌の竜っていますよね。

 
クラウンの馬渕玄三さんですね

 はいはい。あれがね、子分連れてきて話してるわけ。俺を素通りして課長の所へ行って、なんかグジャグジャやってるわけ。その前から現ナマ攻勢がかなり激しくて。それ以上のことも有ったし。
 で、或る日突然、クラウンからレコードが出るって虫プロから聞いて、ちょっとそれ話が違うんじゃないかと思ったんだけど。

 
べつに独占契約が切れたということではなくて

 内緒で。
 
 
橋本さんの与り知らぬ所で艶歌の竜が仕掛けて

 うん。けど、あれでクラウンは持ったんだから。あれが出なかったら潰れてた。

 
クラウンは発足したばかりでしたからね

 一年くらい…西郷輝彦まで売れなくて、来月つぶれる、再来月つぶれるっていう時に、五木寛之が構成したあのLPが売れて。

 
五木寛之さんが鉄腕アトムのLP作ってたんですもんねえ

 かなり頭に来たんだけど、そういう人(課長)はそういう人で、必ず失脚するだろうと。
 現場持ってれば、自分の仕事を邪魔されるのが嫌だから、そういう買収とかに応じないんだけど。
 あれだけの録音が有って、音楽者なんか使うと、キックバックというかリベートみたいな感じで賭けマージャンの誘いがのべつ幕無しに有って。

 
橋本さんも麻雀はやられるんですか

 やらない。絶対にやらない。

 
ゲームは出来るんですか

 出来るけど、出来ない事になってる。ゴルフも出来ませんって言って。
 ところが課長は、俺が出来ないから上司を呼んで麻雀やっちゃう。
 
 
しかし艶歌の竜が鉄腕アトムを仕掛けてたなんて初耳でした

 なんで俺に挨拶しないんだろうって。(向こうが)年上だけど。
 で、課長となんかやってるうちにクラウンから出た。知らないうちに。
 テイチクからもなんか出たよね。 

 
アトムですか?

 アトムじゃない。なんか出たよね、(ソノラマの)独占のやつ。
 
 
なんですかね。ところでソノシートの本を持ってきてるんですが。
(ページをめくりながら)
これが橋本さんが依頼して横山光輝先生に描いてもらった絵(鉄人28号)ですよね。 

 横山さんのは、一集二集と絵が違っちゃってて、私はこれは違うと言ってるんですけど。
  
 
『ビッグX』(原作:手塚治虫、制作:東京ムービー)も橋本さんですか。これはやはり虫プロとの繋がりで独占という事で。

 そうです。それで、これは絵は手塚さんじゃないんです。

 『エイトマン』の時に問題だったのは、それまでは作詞作曲、みんな別だったの。そしたらコロムビアが桑田次郎(原作漫画家)に三十万ぶち込んで。それで頭に来て(ソノラマで)三十万返して。

 
ワタクシはビクターのことかなと思ってました

 ビクターは立派な会社で、あんまりこういう派生ものには手を付けない。
 ビクターはかなり後じゃないかな、アニソン出したのは。

 
でも『0戦はやと』出してます

 あ、そう。

 
『0戦はやと』はソノラマで出しませんでしたが

 見逃したんじゃないかな。課長と俺一人と、途中から村山(実)が入っただけなんで。
 二人でアニメをカバーするとなると大変な事で。
 
 
課長さんは橋本さんが来るまでは一人で何をしてたんですか

 いや、そこ窓際で、そこに送られた奴は大体辞めていくという。

 
じゃ、課長さんもべつに何もやってなかった…

 そう。何もやってない。
 
 
ただ給料だけ貰ってたという…

 そう(笑)。

 
それが橋本さんが来て急に忙しくなっちゃったですね

  それは、接待が。ほとんど毎日のように麻雀が。
 
 
橋本さんの方は若くして窓際行ったのに落ちこまないで

 そういう事はよく有る事なんで。大体、いい時期より悪い時期の方が人間多いんで。

 
その年からそういう風に達観してらしたんで

 うん。そうですよね、サラリーマン生活って。

 
自分も三十代になって解ってきましたけど二十代でその達観ぶりは凄いです

  自分で突っ張ってたから。

 
橋本さんは同志社大学でらっしゃいますか

 はい。

 
同志社から直接ソノラマ(朝日ソノプレス)に入られたんですか

  いや。三年間、就職できなかった。どこも雇ってくんなくて。

 
で、いきなりソノラマの募集に応募されて

 ええ。

 
競争率高かったんじゃないですか

 目茶苦茶高かったです。書類選考終わった段階で二十人くらい。

 
就職浪人三年の人がそこにいきなり受かるというのも凄いですね

 そこは就業規則の第一条に、主義主張・思想の自由を謳ってある。

 
朝日新聞というと左側と見られますが素晴らしい理念ですね

 朝日新聞も良い感じの会社だったんだけど、更に理想を求めて飛び出した連中が作ったんですよね。
 だから初代はトヨペットクラウンでロンドンから日本まで5万キロ走って、それでピューリッツアー賞を貰った人(辻豊氏)なんです。


 
 
その頃から日本車って性能良かったんですね

 いやいやいや。トヨタが社運を懸けてバックアップしたんです。だからバックアップチームがいたんでしょう。
 
 
そうですよね
 
 ガソリンスタンドだってどこに有るかわからない、国境だって定かでないような時代です。 
 それを朝日新聞に掲載して、ピューリッツアー賞かなんか貰った。凄い人が沢山いましたよね。
 
 
橋本さんが入るまではソノラマと言ったら時事問題という感じですか

 
月刊で、時事問題です。

 
ですよね。あのケネディさんの…

 あ、ケネディ出したの僕です。
  
 
やはり閃きで

 大統領の演説って著作権が無いって知って、 たまたま言ったら誰も信じなくて、そんな馬鹿なこと有るかって感じで。
 次長の人が確かめて聞いたら、確かに著作権が無いって、ならやっちゃおうって。
 
 
ケネディさん人気あったからかなり売れたんですよね

 あれは目茶苦茶売れてね。三集くらいまで出たのはわかるわけ。
 阿佐ヶ谷ロフトでトークイベントやった時に持ってきた人がいて、五集まで出てんのね。その後デラックス版まで出たのよ。
 あれ、著作権ないから…

 
美味しいんでしょうねえ、会社としたら

 冊子も、なるべくお金かからない冊子。
 
 
写真はお金かかるんですか

 有名なカメラマンだと、お金ガボッとかかるの。

 
カメラマンの著作権は有りますからね

 うんうんうん。だから著作権が無いか、有ってもわずかな…
 あの時はボイス・オブ・アメリカからテープ貰って、それから演説はプレス・リリースで、大使館が演説の前にプレスに配るの。 それが有ったんで使わせてもらって。
 やっぱりプレス・リリースしたの、原稿と違うところがあちこち出て来て。それを直して、テープに合わせて作っていく。あれは目茶苦茶売れたんじゃないかな。


『ブーフーウー』もやられたんですよね

 あれは途中から喧嘩になってね、 飯沢匡(いいざわ・ただす)と。(内容は(2)最後部で紹介の著書に記述)
 その後で、飯沢匡とは黒柳徹子の事でも揉めて。
 『おそ松くん』のソノシートをテレビ化の前に出して、井上ひさしが台本書いたんだけど、あとで「下品だ」って。 
 確かに当時おそ松くんって言ったら、ハレンチ学園みたいにバッシングに遭って。 
 

いま見たらホノボノした漫画ですよね

 いやいやいやいや。それで村岡花子の前書きを免罪符みたいな形で付けて。
 で、後になって黒柳徹子が「下品な漫画だから名前を消してくれ」って。
 事前にシナリオ渡して、お金も決めて、後で名前変えてくれなんて、それは応じられない。 そしたら飯沢匡が出て来て。
 

あれもソノラマの独占でしたよね。テレビ化の前から扱っていたからでしょうか。

 だから、そういう「付き合い」だよね。 サンデーとの。
 その延長上だから、『オバQ』を独占させろと強硬に主張したわけ。
 『オバQ』の最低保証部数は50万部。


50万って言ったらかなり強気な数字ですよね

 今なら恐ろしいことを(笑)。


それは二集以降も加えてという事ですか

 トータルで。トータルで五十万部保証しますよって言ったの。
 サンデーだって当時60万とか70万くらい。


『鉄腕アトム』の第二集あたりから村山実さんが入社されたんですか

 そうでしょうね。その辺りから。
 仕事を棲み分けまして、東映とか比較的もめ事が少ない所を村山に渡して。ほとんど揉め事だらけなんだけど。
 東映は会社対会社の話で、手塚(治虫)さんみたいな人いないから。普通の話が通じるけど。
 ところがやっぱり、通じない所がアチコチ有るんで、俺は揉め事の有る所を大体やると。


『もぐっちょちびっちょ大冒険』も橋本さんですよね

 はい。

モグッチョチビッチョこんにちは … 昭和38年4月7日~昭和40年4月3日
ラジオNHK第一放送 (日)17:40~1800 ⇒ (土)18:30~18:50
ネズミの国の大小説家モグッチョ先生と、
週刊サンデーマウスの記者チビッチョくんが
巻き起こす、ゆかいな空想冒険ミュージカル。
作:井上ひさし 音楽:宇野誠一郎
出演:藤村有弘、熊倉一雄、黒柳徹子、
千葉信男、八木光生、ボーカル・ショップ 他 
(NHK年鑑より) 

 
いきなりラジオ番組をシート化しようと思ったのはどういう事ですか

 その前にね、井上ひさしって業界では面白いホン(脚本)を書くって有名だったの。けど面白すぎてNHKでは絶対に使わないだろうと。飯沢匡さんが天皇陛下の世界だから。
 
 
飯沢さんの権力はNHK全般に及んでましたか

 飯沢匡が入り口に着くと赤絨毯がひゅうっと(笑)。そのくらいの伝説が有ったの。
 だからNHKでは絶対に使わないだろうと。でも世代替わりがしてきて。
 使ってみようという人がいて、で、井上ひさしが初めてNHKに登場して、けっこう人気あるんで、 じゃあ作ってみようと思ったわけ。
 それは、宇野誠(うのせい=宇野誠一郎)と、みんな友達。

 
井上さんに注目してたから一緒に仕事をしたいと

 そう。それにNHKだから、黙ってても十万や二十万は売れるだろうと。

 
人気あった番組なんですね

 そう。それで彼は『ひょうたん島』に行くわけだから。
 『ひょうたん島』も最初は山元護久がやってたんだけど、毎日はツライだろうと。
 それで井上ひさしが面白いの書いてるし、引っ付ければ丁度いいだろうと。


山元さんと井上さんは『ひょうたん島』で出会ったんですか

 そう。で、山元っていうのは学生時代からNHKで育てた作家なわけ。
 けど、どっちかって言うと真面目なの。 児童文学で。で、井上ひさしが面白いんで、引っ付けるといいんじゃないかって。
 

ずいぶん上手くハマったもんですね。その後ずっと一緒に仕事されてました。

 タイトルは、「山元護久・井上ひさし」だったと思う。 最近は逆になってるけどね。


『ひょうたん島』も橋本さんが音盤化したんですよね

 始めやって、後から他の人が。あれはひとみ座と独占契約結んじゃったから。


NHKでも独占できたんですか。公共放送でも。
 
  それが(笑)、凄い物語があんだけど(笑)。
  『宇宙人ピピ』って、あれをやった時も独占契約で。

 
あれ、他の会社からも出てますよね。

 うん。そして、著作権から呼び出されて。
 「何事だ」って言うの。「公共放送なのに」って。


NHKの著作権部が橋本さんを呼び出して

 それは凄いメンバー。「何事だ」と。ふざけんなって言うわけ、こっちも。
 NHKの歌をレコード会社専属の歌手が歌ったら、それをウチに録音させてくれるかって言ったの。 できないわけ。
 そういう事を起こしておきながらウチの独占契約云々なんておかしいと。で、喧嘩になって。
 最後に課長が呼び出されて、謝っちゃったみたい。
 
 その時、(主題歌歌手の)中村メイコのギャラの問題が生じたの。三十万。当時自分の給料が一万五千円。
 で、迷ったんだけど、結局30万払うって。ただ30万払うけど、よそからも30万取れって言ったの。
 そしたら、後から出した所はみんな赤字になったみたい(笑)。
 

『宇宙人ピピ』って、それほど注目を浴びたわけでもないですもんね

 でもNHKだから、そこそこ売れるわけ。ウチの場合は採算取れたの。
 やっぱり30万取られると、他は全部赤字。
 そういう事が有って、独占にしてもNHKに泣きつく奴がいなくなっちゃったの(笑)。
 それで『ひょうたん島』は独占で。 


渋々ながらNHKも黙認みたいな感じですかね

  あとはジャスラックとの喧嘩もずっと有って。
 JASRACを認めない。


橋本さんが

 うん。
 
 
どういう事で

 JASRACって完全に機能してないでしょ。
 例えば高井達雄なんかJASRACの会員だけど、アトムのあれだけの印税が入らないわけ、あそこに入ってるから。


一回みんなJASRACにゴチャ混ぜに入っちゃうから
 
 入って、収入のランクに応じてパーセンテージで払っていくから。だから高井さんなんかだとほとんど入らない。 
 だから高井さんとは全部JASRAC抜きの契約にしたの。その方が作曲家も喜ぶでしょ。


まさか全部そういうわけじゃないですよね

 ほとんどそうだったよ。
 やっぱり(自分が)辞めた後、査察くらったみたい。

 
はははは(笑)

 だってJASRACだって、ちゃんとカウントしてないんだもの。
 

難しいんじゃないですか

 だってアメリカでもちゃんとしてるじゃない。
 NHKだって、著作権課がちゃんと計算して正確に払ってる。
 カウントしなくてああいう丼勘定はおかしいわけですよ。法律から行くと。
 

けっこう会員の人でも不満を言っている人はいますよね

 うん。だからサトウハチローだって、自分には現金で持って来いって言うもん。


サトウハチローさんとのお仕事はなんでしょう

 なんか有ったね。二つくらい有った。
 俺には現金で持って来いって。JASRACの理事でしょ。関係無い。
 

理事だったんですか

 偉い人だよ、とにかく。
 

理事だったのにそういうこと言うんですか(笑)

 そう(笑)。だから、そういう時代だったの。
 
 
 
 

この稿は 2016年9月4日に埼玉の喫茶店で伺ったお話を元に再構成させて戴きました。